働き方改革の重要な要素「健康経営」とは?

From: 働き方改革ラボ

2018年03月26日 07:00

この記事に書いてあること

皆さんは「健康経営」という言葉をご存知でしょうか。経済産業省のガイドブックによると、健康経営とは、企業が従業員の健康を保持、増進すること。これにより企業の労働生産性が向上し、将来的に収益等を高める投資であるとも言われています。一方で、健康は"個人が管理するもの"という意識がまだまだ根強い日本社会。ここでは健康経営について、企業が行う意味とそのメリットについて考えていきましょう。

「健康経営」とは

株式会社日本政策投資銀行の定義

によると、健康経営とは、「従業員の健康増進を重視し、健康管理を経営課題として捉え、その実践を図ることで従業員の健康の維持・増進と会社の生産性向上を目指す経営手法」。つまり文字通り、働く社員の健康を重視する経営のことを言います。健康は私たちが生活を営む上でとても大切なものですが、一方で、日本社会では健康を"あくまでも個人が管理し責任を持つもの"という考え方が主流。では、なぜ企業が経営課題として従業員の健康を考える必要があるのでしょうか。

「不健康」は損失を招く!?

イギリスの医療雑誌「The Lancet」によると、"不健康"が2013年の1年間で世界経済に与えた損失は約7兆円に上るという調査結果が発表されています。損失の内訳としては、医療に関わるコストが約5.6兆円、死に関わるコストが約1.4兆円。また本来の寿命を全うできずに死に至る人の数は1,340万人と推計されました。また日本でも、2014年度の全国健康保険組合の赤字額が、合計で3,689億円に達するなど、企業の医療費負担が深刻な状況に。こうした健康保険組合等の財政悪化が、結果として、健康保険料の上昇という形で企業負担に響いていることが分かります。

従業員およびその家族の不健康は、最終的に企業経営に大きな影響を与える可能性があるからこそ、企業が率先して健康経営を考えることが大切になってくるのです。

健康を重視することが生産性を高める

従業員が病気やストレスで会社を休んでしまうと、もちろんその分の労働力が失われてしまいます。会社を休まずとも、睡眠不足や疲労などの体調不良は、業務への集中力低下やミスを誘発します。つまり従業員の健康状態は、直接的に企業の生産性を左右するということ。労働生産性を高めるには従業員が健康でストレスなく、存分に働いてもらうことが必要です。そのための健康経営は、近年資金調達よりも難しくなりつつあると言われている「有能な人材の確保」や「人材の定着」に対し、労働力の確保につながるというメリットも十分に考えられます。

「健康経営銘柄」と企業価値の向上

従業員の健康管理を経営的な視点で戦略的に取り組んでいる企業について、経済産業省と東京証券取引所は、原則1業種1社で「健康経営銘柄」と選定しています。2016年に健康経営銘柄に選ばれた企業のうち、2006年1月時点で上場していた22社について株式収益率とリスクをみると、15銘柄が東証株価指数(TOPIX)より高い収益率だったとのこと。例外はあるものの、健康経営の増進は従業員の活力や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績や企業価値の向上が期待できると言えそうです。

健康経営の実現のために企業がすべきこと

健康経営の大切さが理解できたところで、企業はどのような取り組みをすればいいのでしょう。JTBベネフィットによると、具体的には次の3つのステップが挙げられると言っています。

●健康診断の内容を以前より充実させ、一人ひとりに自身の健康について自覚を持たせる

●健康に関する正しい情報を届け、専門スタッフによる健康指導をするなど、健康であるべきことを積極的に啓発する

●十分な昼食時間の確保や運動環境の整備など、日頃から従業員が健康づくりに取り組める設備や施策を整える

例えば、従業員の健康維持のために「血糖値」をKPI(重要業績評価指標)として導入しているGoogle社では、「血糖値を一定状態にすること」が労働における集中力の継続性につながるとして、3時間に一度の食事を推奨しているそうです。また花王株式会社では、健康イベントを積極的に開催。参加毎に健康マイルを付与し、貯まったマイルを健康グッズと交換できるというプログラムも実施しています。

もちろん健康には、身体だけでなく、心の健康も非常に重要な要素であることは言うまでもありません。これを維持していくためには、予防策を講じ、早期に発見、対応することが大きな鍵。そのためにも職場内におけるコミュニケーションの促進、不安に思うことを気軽に相談できる環境づくりが不可欠です。

このように。企業が従業員の健康改善・維持に積極的に取り組むことで、従業員の生活が豊かになり、結果として生産性の向上が期待できるという健康経営。企業と従業員の信頼関係も強くなることで、優秀な人材が定着し、企業価値も上がるなど、そのメリットは少なくありません。

こうした取り組みに必要な経費を、"コスト"ではなく戦略的な"投資"と捉えることが、健康経営の第一歩。一億総活躍社会を目指す働き方改革においても、健康経営は今後ますます重要な戦略の一つになっていくのではないでしょうか。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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